鮭酒造(さけしゅぞう)について

私たちは、2024年11月11日に「労働者協同組合 鮭酒造」という法人名で創業しました。

代表の大橋 誠、市川 菜緒子、川口 明美、佐藤 貴英、渡邊 航と申します。

米どころで有名な、千葉県多古町を中心に活動をしています。

私たちにはまだ酒蔵がありません。2029年醸造開始を目標に、酒蔵づくりから取り組んでいます。

団体名称「鮭酒造」の由来

 鮭のように、私達も地球を豊かにする存在でありたい。鮭のように、人々の暮らしも豊かにする存在でありたい。そしていつの日か、栗山川にたくさんの鮭が帰ってくるような、豊かな社会を取り戻したい。そんな願いを込めました。

鮭酒造の建設予定地である、千葉県香取郡多古町(たこまち)に流れている、栗山川は鮭が遡上する川としては太平洋側における最南端の川です。
 鮭の役割とは一体何でしょうか。ある一説によると、雨に溶け、川を伝って海に流れてしまう大地の栄養分やミネラルを、鮭がまた大地に戻す。その大切な役割を担っていると言われています。鮭の栄養が森を育て、その森がまた海を豊かにする。このめぐりめぐる地球の物質循環における重要な役割を、鮭が担っているというのです。

 そんな素晴らしい魚、鮭が帰ってくる最南端の川、栗山川流域の酒蔵として、私達は団体の名前に「鮭」をいただきました。 

鮭酒造の使命 「豊かさを取り戻す。」

 酒造りを通して、自然と共に生きる豊かさを実感してもらいたい。現代に失われてしまった豊かさを取り戻す。これを私達の使命とします。
 私たち鮭酒造が思う豊かさに欠かせないもの。それは、自然、実感、自治、仲間です。

 酒造りを通して、幸せな気持ちを、豊かさを実感できる場をつくっていきたいと思っています。

 私達の酒造りは、自然豊かな田舎の蔵で、薪割りから始まります。蔵の熱源はすべて、薪を燃やした炎です。斧を持って、自ら割る。汗をかいて頑張ると、コツが分かってきます。それが楽しい。

 お酒の原料は、自分たちが汗して育てたお米です。麹菌も酵母菌も、田んぼから採取します。だから、田んぼが健康でなくてはなりません。酒は先人の知恵に学び、薬品を使わずにじっくりゆっくり発酵させます。ところで、酒造りは一人ではできません。仲間を集めて力を合わせ、楽しく汗をかくのです。

蔵を建てたら、こんなことをやりたい

 自然と共に生きる豊かさを、味わい楽しみ感謝する、そんな酒蔵を建てたいのです。

 酒は自然からの贈りものです。自然に感謝し、自然と共に生きる豊かさを、酒蔵を拠点に味わいつくそうと考えています。 農園をつくり、田畑を耕し、果樹を植え、小さな畜産や森づくりも行いたいと考えます。

1)酒造りの自由を実現する。

 米一俵(玄米60㎏)からの小規模醸造を受け入れます。しかしこれはいわゆる委託醸造ではありません。酒造り体験でもありません。依頼者自らが酒の設計図を描き、依頼者が現場に立ち、自分の酒を造る。鮭酒造は酒蔵という場を提供し、酒造りのノウハウを教え、サポートし、酒造りを楽しんでもらいます。まさに、酒造りの自由を実現する事業です。

2)酒蔵をコモン(社会の共有財)にする。

 私達は、酒蔵をコモンにします。来たい人が自由に来て、遊び、憩える場所として開放します。特に、地元の方々にとっての憩いの場所となりたいと願っています。そうすることで、地元に愛される地酒蔵にもなれると思っています。

3)酒の宿をつくります。

 酒造りは米洗いから始まり、麹造り、仕込みと、重要部分だけを抜き出しても、最低4泊5日の時間が必要となります。そこで、酒造りをはじめとして、農業や発酵食品づくりを楽しめる宿泊事業を運営します。

4)農村の豊かさ事業を展開。

 酒造りを楽しめる人は、農村の豊かさを味わいたい人と一致します。これは、農業と酒造りをしてきた私の実感です。畑や果樹園、小さな畜産や森づくりなど、農村に溢れる豊かさを存分に楽しめる場を作ります。もちろん、耕作放棄地となった田んぼもたくさんあります。少しずつ復田し、農村の風景を復活させていく考えです。

5)酒造りの原料である米、水、菌、そしてエネルギーを自己調達。

 私たちは健康な田んぼをつくり、そこから米、麹菌と酵母菌を採取します。本当に意味で、田んぼを表現するのです。そして、蔵で使う熱源は薪の炎です。現材料だけでなくエネルギーも、自然から分けていただきます。人が豊かに生きていくために必要なものは、常に自然の中にあるのです。こうして造られる私たちの酒には、自然の豊かさが溢れています。

6)新しい働き方で、喜びの酒をつくる。

 私たちは労働者協同組合という法人格を選びました。これは、そこで働く労働者が出資者であり、経営者であるという法人格です。現在の働き方のほとんどは、経営者が考え、労働者が実行するというもので、力のベクトルとしては上から下へのトップダウン型と言えます。しかし私たちは、自らで考え、働きます。そのベクトルはボトムアップ型です。この、ボトムアップの新しい働き方を実践することで、働く喜びに満ちた酒蔵をつくります。酒蔵の外にも必ず、この働き方を応援してくれる応援団が生まれるはずで、酒蔵の内側からも外側からも、大きな力が生まれると思っています。

鮭酒造の酒づくり

「田んぼを表現する酒」

これが、鮭酒造が造りたいお酒のメインテーマです。自然と寄り添い、自然と戦ってきたかつての農業とは全く違う、自然を人間が思うままにコントロールする農業に変わってしまったと、私は考えています。

 

 私たちは、化学肥料と農薬を使わない米作りを実践しています。雑草と害虫、病害と戦わなくてはならないですから大変です。
 しかし、私たちの田んぼは愉快です。土が喜ぶ天然のミネラルやたい肥を入れているので、年々土が元気になり、微生物が増え、カエル、ドジョウ、沢ガニ、ホタルなど生き物たちが集まってきています。そんな田んぼで少し苦労しながら、たくさんの生き物たちと稲を育てるのはとても楽しいことです。

 人間も、たくさんの生き物たちに支えられて生きていることを実感しますし、やはり人間も自然の一部であることをしみじみ感じ、謙虚になります。実りの秋には自然と、収穫の喜びが湧き上がってきます。私が表現したいのは、そんな田んぼなのです。農家も、食べる人も、田んぼに集まる生き物たちも喜ぶ田んぼです。お酒を飲む人に、この豊かな田んぼの情景と、豊かなひとときを贈りたいのです。

どんな味わいのお酒か

 米の味をまるごと楽しめる豊かな味を目指します。 味わい深く呑み飽きしない、それでいて、搾りたての美味しさを残す酒を目指します。
 私たちは、「雑味もまた旨味なり」という立場を取ります。精米を、ご飯として食べられているお米の精米歩合と同じ90%精米で酒を仕込みます。ただし、その精米歩合でも酒の味が荒くならないように、技術を駆使し、手間を惜しまない酒造りに勤めます。