鮭酒造(さけしゅぞう)について

私たちは、2024年11月11日に「労働者協同組合 鮭酒造」という法人を立ち上げました。

大橋 誠(代表)、市川 菜緒子、川口 明美、佐藤 貴英、渡邊 航の5名が創業メンバー。

千葉の米どころとして知られる、香取郡多古町で活動しています。

しかし、私たちにはまだ酒蔵がありません。だから建てる!
今は、酒蔵建設予定地の開墾に汗を流しています。

自分たちの蔵ができるまでは、近隣の酒蔵にご協力いただき、私たちの酒を造らせてもらっています。

団体名称「鮭酒造」の由来
 多古町には、町を南北に貫くように流れる川があります。栗山川です。この川が、多古町の稲作を支えています。そしてこの川には、もう一つの豊かな恵みがやってきます。鮭です。
 栗山川は、鮭が帰ってくる川としては太平洋側における最南端の川なのです。このあたりではずっと昔から、鮭が神様として大切にされてきました。

 ところで、鮭は実に不思議な魚です。川で産まれて海に下り、遠くアラスカの海に至る、約4年の旅をめぐります。そして旅の最後に、なぜかまた産まれた川に戻ってきて産卵し、生涯を終えるのです。どうして産まれた川に戻ってこられるのか、それはいまだに謎のままです。しかしなぜ再び、わざわざ産まれた川に帰って来るのでしょうか。
 一説によると、鮭は地球の物質循環に大きな役割を果たしていると言われています。

 雨に溶け、川を伝って海に流れてしまう大地の栄養分やミネラルを、鮭が、再び大地に戻しているというのです。約4年に渡って海で成長した鮭の体には、大地から海に流れ出た養分が蓄えられています。その鮭が自分の生まれた川に戻って動物に食べられたり、土に還ることで、海に流れた養分を大地に戻しているというのです。鮭の栄養が植物を育て、森となり、その森がまた海を豊かにする。このめぐりめぐる地球の物質循環における重要な役割を、鮭が担っているというのです。なんて素晴らしい魚なのでしょうか。

 

 そんな素晴らしい魚、鮭が帰ってくる最南端の川、栗山川流域の酒蔵として、私たちは名前に「鮭」をいただきました。鮭のように、私達も地球を豊かにする存在でありたい。鮭のように、人々の暮らしも豊かにする存在でありたい。そしていつの日か、栗山川にたくさんの鮭が帰ってくるような、豊かな社会を取り戻したい。そんな願いを込めました。

鮭酒造の使命 「豊かさを取り戻す。」

 酒造りを通して、自然と共に生きる豊かさを実感してもらいたい。現代に失われてしまった豊かさを取り戻す。これを私達の使命とします。
 私たち鮭酒造が思う豊かさに欠かせないもの。
 それは、自然、実感、自治、仲間です。

 酒造りを通して、幸せな気持ちを、豊かさを実感できる場をつくっていきたいと思っています。

 私達の酒造りは、自然豊かな田舎の蔵で、薪割りから始まります。蔵の熱源はすべて、薪を燃やした炎です。斧を持って、自ら割る。汗をかいて頑張ると、コツが分かってきます。それが楽しい。
 お酒の原料は、自分たちが汗して育てたお米です。麹菌も酵母菌も、田んぼから採取します。だから、田んぼが健康でなくてはなりません。ではどうすれば…と考える。自分で考え、自分で決める。自治の精神が大切です。

 酒は自然からの贈りもの。だから、自然と向き合ってきた先人の知恵に学び、薬品を使わずにじっくりゆっくり発酵させます。そして酒造りは一人ではできません。仲間を集めて力を合わせ、楽しく汗をかくのです。こうして造ったお酒には、喜びが満ちています。乾杯にも、豊かな気持ちが溢れます。これが私達の考える、豊かな酒造りです。

  この豊かさを表現し、賛同を得られたなら、こんなに嬉しい事はありません。

蔵を建てたら、こんなことをやりたい

1)酒造りの自由を実現する。

 米一俵(玄米60㎏)からの小規模醸造を受け入れます。しかしこれはいわゆる委託醸造ではありません。酒造り体験でもありません。依頼者自らが酒の設計図を描き、現場に立って自分で造る。鮭酒造は酒蔵という場を提供し、造り方を教え、サポートします。酒造りを楽しんでもらいたいのです。酒造りの自由を実現したいと思っています。

2)酒蔵をコモン(社会の共有財)にする。

 私達は、酒蔵をコモンにします。来たい人が自由に来て、遊び、憩える場所をつくりたいのです。

3)酒の宿をつくります。

 酒造りは米洗いから始まり、麹造り、仕込みと、重要部分だけを抜き出しても、最低4泊5日の時間が必要となります。そこで、酒造りをはじめとして、農業や発酵食品づくりを楽しめる宿泊事業を運営します。

4)農村の豊かさ事業を展開。

 畑や果樹園、小さな畜産や森づくりなど、農村に溢れる豊かさを存分に楽しめる場を作ります。耕作放棄地となった田んぼも少しずつ復田します。酒を造ることで、景色も変えていけたらと思っています。

5)酒造りの原料である米、水、菌、そしてエネルギーを自己調達。

 私たちは全ての原料を自己調達します。田んぼからは米だけでなく、麹菌と酵母菌も採取します。そして、蔵で使う熱源は薪の炎です。現材料だけでなくエネルギーも、自然から分けていただきます。人が豊かに生きていくために必要なものは、常に自然の中にあるのです。こうして造られる私たちの酒には、自然の豊かさが溢れています。

6)新しい働き方で、喜びの酒をつくる。

 私たちは労働者協同組合という法人格を選びました。そこで働く労働者が経営者であり、出資者でもあるという新しい法人格です。私たち5人全員は労働者でありながら、全員が経営者なのです。私は代表ですが、権力はありません。みんなで話し合って、一歩一歩進みます。成功すれば皆で喜び、失敗すれば皆で泣く。責任も皆で負う。既に皆が経営者ですから、出世競争はありません。組織内にあるのは競争ではなく、助け合いです。 この新しい働き方を実践することができれば、何だか煮詰まってしまった世の中に、一つの処方箋を示すことができるのではないか、そう思いました。

7)「米農家 兼 醸造家」という新しい農家を育てる
 米農家が減っています。稲作では儲からない。暮らしていけないというのです。 しかし、稲作はこの国の根幹。一番大切な基礎だと考えます。だから、米農家の一つのモデルを提案し、育成します。米を育て、その米をもとに酒を造る。事業としての相乗効果はもちろんのこと、楽しく夢のある農家像の提案です。2026年度から、私たちと一緒に米をつくり、酒を造る仲間を募集します。

鮭酒造の酒づくり

「田んぼを表現する酒」

これが、鮭酒造が造りたいお酒のメインテーマです。一口飲めば、私たちの田んぼが思い浮かぶ。そんなお酒を造りたいと思っています。

 

 田んぼには、実に多くの様々な生き物が暮らしています。人が健やかに暮らすためには、彼らと共存していくしかないと思っています。だから私たちは、化学肥料と農薬を使いません。
 おかげで私たちの田んぼは愉快です。年々土が元気になり、微生物が増え、カエル、ドジョウ、沢ガニ、ホタルなど生き物たちが集まってきています。そんな田んぼで少し苦労しながら、たくさんの生き物たちと稲を育てるのはとても楽しいことです。

 人間も自然の一部であることをしみじみ感じ、謙虚になります。実りの秋には自然と、収穫の喜びが湧き上がってきます。私が表現したいのは、そんな田んぼなのです。農家も、食べる人も、田んぼに集まる生き物たちも喜ぶ田んぼです。お酒を飲む人に、この豊かな田んぼの情景と、豊かなひとときを贈りたいのです。

どんな味わいのお酒か

 目指しているのは味ではありません。造り方です。できるだけ機械に頼らず、手でつくる。薬品を使わず、先人の知恵に学ぶ。体は悲鳴をあげますが、五感がよみがえるのを感じます。そうやって酒と向き合う。すると、酒が応えてくれます。大変なのに、なぜか楽しい。酒造りは不思議です。

今回造った日本酒の銘柄は「鮭」。

90%精米の生酛造り純米酒。
栄養たっぷりの荒ぶるポテンシャル。
生酛によって鍛えられた酵母の底力。
この暴れ馬を乗りこなし、抑制の効いた大人の酒に仕上げるため、有無を言わせぬ超低温、ぐっと我慢の超長期発酵を断行しました。上槽二日後、瓶燗一度火入れで仕上げましたので、冷でも燗でも、いい表情を浮かべてくれます。
どうぞ、さまざまにお楽しみください。

「生酛純米酒 鮭」