ABOUT

2029年醸造開始を目標に千葉県多古町でクラフトサケの醸造所設立に取り組んでいます。

鮭酒造(さけしゅぞう)  salmon brewery


団体名称「鮭酒造」の由来

 鮭酒造のある千葉県香取郡多古町には、栗山川という河川が流れています。多古町は多古米という銘柄米の産地として知られる米どころですが、この栗山川の水が米作りを支えています。またこの川には、大量にではないものの、鮭が遡上してきます。そしてこの栗山川が、鮭が遡上する川としては太平洋側における最南端の川なのです。

 鮭は川で生まれて海へと下り、約4年におよぶ約16,000キロもの過酷な長旅を経て、生まれた川へと帰ってきます。鮭がどうして生まれた川に帰って来られるのか、それはいまだに謎ですが、日本から遠くアラスカの海まで泳いだ後、再び生まれた川へと戻ってくるのですから、感心せざるを得ません。食料の乏しかったその昔、さらに食べものが少なくなる冬場に遡上してくる鮭に対し、自然からもたらされる豊かな恵みとして、人々は深い感謝を捧げていたことでしょう。 多古町の隣、香取市にある神社 山倉(やまくら)大神(だいじん)では、毎年12月最初の日曜日に、「鮭祭り」が行われています。栗山川にのぼってくる鮭の恵みに感謝し、無病息災を願うお祭りです。記録によれば、平安時代の中ごろに始まった祭りで長い歴史を持っており、2005年には千葉県の無形民俗文化財の指定を受けています。「鮭祭り」が象徴するように、栗山川流域の人々にとって、鮭は大切な魚だったのです。

 ところで、鮭の役割とは一体何でしょうか。どうして、わざわざ生まれた川に帰って来て卵を産み、生涯を終えるのでしょうか。実は、鮭は地球の物質循環に大きな役割を果たしていると言われています。雨に溶け、川を伝って海に流れてしまう大地の栄養分やミネラルを、鮭がまた大地に戻す。その大切な役割をになっているというのです。約4年に渡って海で成長した鮭の体には、大地から海に流れ出た養分が蓄えられています。その鮭が自分の生まれた川に戻って動物に食べられたり、土にかえることで、海に流れた養分を大地に戻す役割がある、ということです。鮭の栄養が森を育て、その森がまた海を豊かにする。このめぐりめぐる地球の物質循環における重要な役割を、鮭が担っているというのです。何とありがたいお魚でしょうか。アイヌ民族が鮭のことを「カムイチェプ」、神の魚と呼んでいますが、本当にその通りだと思います。

 そんな素晴らしい魚、鮭が帰ってくる最南端の川、栗山川流域の酒蔵として、私達は団体の名前に「鮭」をいただきました。鮭のように、私達も地球を豊かにする存在でありたい。鮭のように、人々の暮らしも豊かにする存在でありたい。そしていつの日か、栗山川にたくさんの鮭が帰ってくるような、豊かな社会を取り戻したい。そんな願いを込めました。

■鮭酒造の使命

 豊かさを取り戻す。

 酒造りを通して、自然と共に生きる豊かさを実感してもらいたい。

現代に失われてしまった豊かさを取り戻す。これを私達の使命とします。

 私たち 鮭酒造が思う豊かさに欠かせないもの。それは、自然、実感、自治、仲間です。

 私達の酒造りは、自然豊かな田舎の蔵で、薪割りから始まります。蔵の熱源はすべて、薪を燃やした炎です。斧を持って、自ら割る。汗をかいて頑張ると、コツが分かってきます。それが楽しい。お酒の原料は、自分たちが汗して育てたお米です。麹菌も酵母菌も、田んぼから採取します。だから、田んぼが健康でなくてはなりません。ではどうすれば…と考える。自分で考え、自分で決める。自治の精神が大切です。そして酒は、自然からの贈りものです。だから自然に感謝し、自然と向き合ってきた先人の知恵に学び、薬品を使わずにじっくりゆっくり発酵させます。また、酒造りは一人ではできません。仲間を集めて力を合わせ、楽しく汗をかくのです。こうして造ったお酒には、喜びが満ちています。乾杯にも、豊かな気持ちが溢れます。これが私達の考える、豊かな酒造りです。

 この酒造りを通して、幸せな気持ちを、豊かさを実感できる場をつくっていきたいと思っています。

■蔵を建てたら、こんなことをやりたい

酒造りの自由を実現する。

米一俵(玄米60㎏)からの小規模醸造を受け入れます。しかしこれはいわゆる委託醸造ではありません。酒造り体験でもありません。依頼者自らが酒の設計図を描き、依頼者が現場に立ち、自分の酒を造る。鮭酒造は酒蔵という場を提供し、酒造りのノウハウを教え、サポートし、酒造りを楽しんでもらいます。まさに、酒造りの自由を実現する事業です。

酒蔵をコモンにする。

コモンとは、社会の共有財のことです。例えば公園や図書館、公共交通などがコモンにあたります。私達は、酒蔵をコモンにします。来たい人が自由に来て、遊び、憩える場所として開放します。特に、地元の方々にとっての憩いの場所となりたいと願っています。そうすることで、地元に愛される地酒蔵にもなれると思っています。

酒の宿をつくります。

酒造りは米洗いから始まり、麹造り、仕込みと、重要部分だけを抜き出しても、最低4泊5日の時間が必要となります。そこで、酒造りをはじめとして、農業や発酵食品づくりを楽しめる宿泊事業を運営します。鮭酒造が用意する宿泊所だけでは宿泊者を受け入れきれなくなると考えています。そこで、「栗山川農泊推進協議会」をつくり、近隣の宿泊施設と連携し、町村という枠にとらわれず、地域全体として盛り上がっていきたいと考えています。

農村の豊かさ事業を展開。

 酒造りを楽しめる人は、農村の豊かさを味わいたい人と一致します。これは、農業と酒造りをしてきた私の実感です。なので、酒蔵の近くに農園を開設します。ラッキーなことに、酒蔵から林を歩いて2分の近所に、木々に囲まれた広大な遊休農地がぽっかりとひろがっています。まるで私たちがやって来るのを待っていたかのような畑でした。ここを鮭酒造農園として活用し、みなさんに存分に楽しんでいただこうと考えています。畑や果樹園、小さな畜産や森づくりなど、農村に溢れる豊かさを存分に楽しめる場を作ります。もちろん、耕作放棄地となった田んぼもたくさんあります。少しずつ復田し、農村の風景を復活させていく考えです。

原料のほぼ全てを自己調達。

酒造りの原料は、米、水、菌、そしてエネルギーです。これらを自己調達します。

私たちは健康な田んぼをつくり、そこから米を収穫するだけでなく、麹菌と酵母菌も採取します。本当に意味で、田んぼを表現するのです。そして、蔵で使う熱源は薪の炎です。現材料だけでなくエネルギーも、自然から分けていただきます。

人が豊かに生きていくために必要なものは、常に自然の中にあるのです。人間も自然の一部だからです。こうして作られる私たちの酒には、自然の豊かさが溢れています。この豊かさを、多くの人々にお伝えしたいのです。

新しい働き方で、喜びの酒をつくる。

私たちは労働者協同組合という法人格を選びました。これは、そこで働く労働者が出資者であり、経営者であるという法人格です。現在の働き方のほとんどは、経営者が考え、労働者が実行するというもので、力のベクトルとしては上から下へのトップダウン型と言えます。しかし私たちは、自らで考え、働きます。そのベクトルはボトムアップ型です。この、ボトムアップの新しい働き方を実践することで、働く喜びに満ちた酒蔵をつくります。酒蔵の外にも必ず、この働き方を応援してくれる応援団が生まれるはずで、酒蔵の内側からも外側からも、大きな力が生まれると思っています。

■鮭酒造の酒づくり

私たちは「輸出用清酒製造免許」と「その他の醸造酒製造免許」を取得し、日本酒、どぶろく、クラフトサケを造ります。

 

どんな酒をつくりたいのか。
 

「田んぼを表現する酒」

これが、鮭酒造が造りたいお酒のメインテーマです。

今、ほとんどの農業は工業化してしまったと私は思っています。それを全否定するつもりはありませんが、自然と寄り添い、自然と戦ってきたかつての農業とは全く違う、自然を人間が思うままにコントロールする農業に変わってしまったと、私は考えています。

 


私たちは、化学肥料と農薬を使わない米作りを実践しています。雑草と害虫、病害と戦わなくてはならないですから大変です。しかし、私の田んぼは愉快です。化学肥料を使わず、土が喜ぶ天然のミネラルやたい肥を入れているので、年々土が元気になり、微生物が増え、生き物たちが集まってきています。カエル、ドジョウ、沢ガニが遊び、ホタルが舞っています。それを求めて鳥たちも集まって来ます。先日はカワセミが私の田んぼに来てカエルを食べていました。秋の稲刈りでは、イナゴがバチバチと顔に当たってきますし、ウサギやキジが田んぼから飛び出してきます。そんな田んぼで、少し苦労しながら、たくさんの生き物たちと稲を育てるのはとても楽しいことです。人間も、たくさんの生き物たちに支えられて生きていることを実感しますし、やはり人間も自然の一部であることをしみじみ感じ、謙虚になります。実りの秋には自然と、収穫の喜びが湧き上がってきます。私が表現したいのは、そんな田んぼなのです。農家も、食べる人も、田んぼに集まる生き物たちも喜ぶ田んぼです。お酒を飲む人に、この豊かな田んぼの情景と、豊かなひとときを贈りたいのです。
 
麹菌、酵母菌も、私たちの田んぼから採取していきたいと思っています。そのため、ますます田んぼの環境が重要になります。良い菌が住み着くような、健康な田んぼでなければならないからです。私は農家として、ますます田んぼへ注力するようになり、その結果、稲も良く育ち、米が良くとれ、楽しい稲作を営むことが出来ます。そうして出来た酒は、田んぼそのもの、私たちそのものです。そんなお酒を造りたいと思っています。
 

どんな味わいのお酒か

 米の味をまるごと楽しめる豊かな味を目指します。吟醸酒特有の強い香りは求めません。 味わい深く呑み飽きしない、それでいて、搾りたての美味しさを残す酒を目指します。

私たちは低精白の米で酒を仕込みます。低精白とは、あまり精米しないということです。通常、酒造りに使われる米は、最低でも70%精米です。つまり、30%をぬかとして削り取るわけです。吟醸酒になるとそれが60%精米になり、大吟醸酒になると50%精米になっていきます。一般的な酒造りでは、米の外側に多く存在する雑味成分をそぎ落とし、よりクリアな味の酒を造ることが良しとされています。

 しかし私たちは、「雑味もまた旨味なり」という立場を取ります。精米を、ご飯として食べられているお米の精米歩合と同じ90%精米で酒を仕込みます。ただし、その精米歩合でも酒の味が荒くならないように、技術を駆使し、手間を惜しまない酒造りに勤めます。
 

熱源には薪を使います。

酒造りに熱源は欠かせません。特に、米を蒸すとき、強力な熱源が必要です。現在では、ほとんどの酒蔵でボイラーが使われています。化石燃料である灯油を燃やして蒸気を発生させ、その熱で湯を沸かしているのです。歴史をさかのぼれば、ボイラーの前は重油バーナーが使用されていました。その炎で大釜を炊くのです。重油バーナーの前は、石炭を燃やして湯を沸かしており、さらにその前、江戸時代には、薪を燃やして湯を沸かしていました。
 
鮭酒造ではこの江戸時代式を採用し、薪を熱源にしようと思っています。何故かというと、薪は、CO2(二酸化炭素)排出量がゼロだからです。薪は木だった時に二酸化炭素を吸っているので、それを燃やしてもプラスマイナスゼロ、とされるのです。CO2削減が言われる今の時代には必要な取り組みだと思います。田舎では伐採された木が捨てられていることが多く、それを有効利用できることにも価値があると思います。
 

薪の炎を実感したい、というのも理由の一つです。自分で火をつけて、大きな炎に育てていく過程は、実に楽しい作業です。「ボイラーのスイッチひとつ押せばできる…」という楽さには、やはり大きな落とし穴が隠れています。炎を育てるという、せっかくの楽しい作業を無くしてしまっているからです。もちろん、毎日薪で炎を育てるのは、多くの時間を要しますし、大変なこともあるでしょう。けれども、その難しさに楽しさがあり、だから仕事の喜びが生まれるのです。こういうところにしっかり取り組みたいのです。

実際、薪の炎は素敵です。汗だくになって薪をくべる職人の姿。美しく、力強い炎によって蒸しあげられた米、そうやって出来た酒。それだけでも、美味しい酒になるような気がしてきます。
 

なるべく機械を使わない。

機械を使わないかわりに、造り手は五感を研ぎ澄まし、身体を駆使し、汗を流します。機械を使えば確かに肉体は楽です。効率も良い。しかし、五感が働かない酒造りに喜びはあるのだろうか、と思っています。

 なので、なるべく機械は使用しません。身体を駆使します。蔵に聞こえるのは、蔵人の息遣いと足音、掛け声だけです。こうした環境下でのみ、蔵人は五感を研ぎ澄ますことができ、酒に向き合うことができると思っています。肉体的にある程度大変だからこその満足感、充足感を得ることもでき、それが楽しい酒造りに繋がるのだと思っています。


発酵タンクは、多古町の杉を使用した木桶を使います。

 自然と向き合い、五感を研ぎ澄ます酒造りですから、発酵タンクはやはり木桶を使いたいと考えています。10石(1,800リットル)の大きな木桶となるので、多古町にある杉の中でも杉材として優秀な、選りすぐりの杉を伐採し、木桶をつくります。

■これまでの歩み これからの予定

これまでの歩み

2022年2月 株式会社 守屋酒造(山武市)にて、大橋が初めて自分の酒造りをさせてもらう。
       (自分の設計図で、自分の米を、自分で酒に仕上げた。)

2023年12月 鮭酒造発足。5人のメンバーで活動を開始。

       メンバーの一人 市川菜緒子が12月より三か月間、秋田県男鹿市のクラフトサケの蔵元
       「稲とアガベ醸造所」にて修行を行う。

2024年2月 鮭酒造メンバーで秋田酒蔵視察。

       市川が修行する「稲とアガベ醸造所」をはじめ、「さいや酒造店(雪の茅舎)」「栗林酒造店(春霞)」を巡る。

2024年4月 千葉日報第一面に記事掲載。

       「ちば新時代 私たちの挑戦『自然栽培の多古米で酒を』」

2024年9月 鮭酒造メンバーで長野、埼玉酒蔵視察。

      「ブリューイングファーマーズ&カンパニー」(長野県佐久市)「やまね酒造」(埼玉県飯能市)「権田酒造」(埼玉県熊谷市)を巡る。


これからの予定

2024年11月 「労働者協同組合 鮭酒造」 法人登記完了。

2024年11月 多古町主催の物産祭り「いきいきフェスタ」にて初のイベント出展を予定。

2025年2月 守屋酒造(山武市)にて、鮭酒造として初めて酒を造り、販売。初のクラウドファンディングに挑戦。

2025年12月 蔵の建設を開始。

2026年 2月 守屋酒造にて二度目の酒造り。

2026年12月 酒蔵の構造部分と屋根が完成。

      トレーラーハウスの簡易宿泊所設営。厨房施設、食堂、風呂、トイレが完成。   

2027年1月 酒蔵づくりの宿泊事業営業開始

2027年2月 守屋酒造にて三度目の酒造り。

2028年2月 守屋酒造にて四度目の酒造り。

2028年12月 酒蔵完成 設備導入

         「その他の醸造酒製造免許」「輸出用清酒製造免許」取得

2029年1月 完成した酒蔵での酒造り開始